トラウマと人間のレジリエンス(困難から立ち直る力)

NLP Training in Japan - teaching Brain Regions

トラウマ(精神的外傷)的出来事が起こると、その出来事の記憶(VAKOGAd)と試みられる反応(対応)についての指示(触運動感覚)と、時間/場所の符号化(海馬)と緊急性の程度(小脳扁桃)と共に神経ネットワークが脳内に設定されます。
緊急性の程度が低い場合、レジリエンス(困難から立ち直る力)・パターンが生じ、該当の出来事によってストレスを受けたとしてもその人は正常に機能し続けることができます。
緊急性の程度が高い場合、少なくともしばらくはPTSDスタイルの反応が生じ、正常な日常的機能を果たすことがかなり難しくなるでしょう。その時点で存在している新しい神経ネットワークをつなぎ合わせる神経伝達物質は、おそらくノルアドレナリンとアドレナリンのような伝達物質を多く含んでいると考えられます。
小脳扁桃連結の目的は、将来的に類似した出来事が起きたときに、その神経ネットワークが優先的に働き、生命を危険にさらさないための計画的な反応(対応)を考えようとする前頭前野(意識的なゴール設定など)を停止できるようにすることです。計画的な反応(対応)はたいていの場合生命を守りますが、時にパニック反応が起こることがあります。これは、感覚的刺激により誘発されますが、刺激そのものは危険ではありません。パニック反応が起きた場合でも、ほとんどの人たちは有事後2カ月ほどかけてその神経ネットワークを徐々に編集していき、日常的な機能の妨げにならないようにしていきます。これは、リカバリー(回復)と言われるパターンです。
中には、すでに持ち合わせていた思考スタイルのせいでリカバリーを難しくする人もいますし(たとえば、何か悪いことが再び起こるのではないかと常にチェックするパターン)、それにより問題を長期化させることになるでしょう。これはクロニシティ(慢性)と言われるパターンです。
これら3つのパターンのどれが生じるかは、すでに持ち合わせている思考スタイル、世界モデル(世界観)、類似したトラウマの先行体験、現在のトラウマ的出来事の深刻度と、そのトラウマが起きた時点での社会的支援によって決まります。

「疫学研究の推定によると、米国人口の大半は少なくとも一回はトラウマ的出来事にさらされた経験があり、これはDSM-Ⅲ基準*を採用し、人生における通常経験を超えたものとして定義された出来事のことです。喪失とトラウマの症状は質的には異なりますが、トラウマ後の結果としてたどる基本的な道筋は死別後に見られるものと類似したパターンを構成する傾向にあります」
(*DSM-Ⅲ基準:訳注『ウィキペディアの精神障害の診断と統計の手引き』:1980年発表。症候学的記述および量的基準を導入した新しい診断基準を採用、さらに多軸評定という新しい手法を導入した。疾患概念も追加され、診断項目はほぼ倍増した)
このリサーチを要約して、最近Ozer et al.(2003)が「約50-60%の米国人がトラウマ的ストレスにさらされており、そのうちPTSDへと発展したのは5-10%(P54)のみ」と記しました。しかし、ストレスになる出来事にさらされた形にはかなり幅のある多様な種類や程度があるため、時間経過の中でPTSDの程度もかなりの多様性がある傾向にあります。慢性的PTSDの推定割合には幅があり、例えば1992年ロサンジェルス暴動の間に脅威や暴力を経験した人たちにおいては6.6-9.9%であり (Hanson, Kilpatrick, Freedy, & Saunders, 1995)、湾岸戦争の兵士においては12.5% (Sutker, Davis, Uddo, & Ditta, 1995)、バイク事故で入院して生き延びた人においては16.5% (Ehlers, Mayou, & Bryant, 1998)、肉体的虐待の犠牲者においては17.8% (Resnick, Kilpatrick, Dansky, Saunders, & Best, 1993)です。
 慢性的PTSDは確かに懸念すべきことですが、暴力または生命を脅かされる出来事にさらされたとしても、大半の人は障害を発展させるに至らないという事実はあまりきちんと認識されてきていません。トラウマ的出来事にさらされた多くの人たちは短期的なPTSDか、または数か月かもう少しの時間をかけて減少していく(リカバリー・パターン)潜在性ストレス反応を示すということは明らかになっています。たとえば、ニューヨークの9.11テロリスト攻撃後一カ月に実施された調査では、マンハッタン在住者の7.5%がPTSDの評価基準に相当しており、17.4%は準PTSD(徴候の程度は高いが診断基準に完全に合致しない)の評価基準にあたると評価しました( Galea, Ahern, et al., 2002)。また他の研究では、慢性的PTSDをやがて発症させたグループは露出度の度合いが高い可能性があるとのことでした。しかし、ほとんどのレスポンデントは時間の経過とともに徴候の急速な低下を示しました。9.11に関連するPTSD有病率は4カ月後に1・7%、半年後に0.6%まで下がり、軽症のPTSDは4カ月後に4.0%、半年後に4.7%になりました(Galea et al., 2003)。」– Bonanno, 2004
Bonanno, G.E. “Loss. Trauma and Human Resilience” American Psychologist, January 2004, Vol. 59, No. 1, pages 20–28 (Quote from page 24)

レジリエンスとリカバリーのパターン

米国心理学会が発表しているリサーチの示す「レジリエンスを築く10通りの方法」
(1) 近親の家族や友人たちとよい関係を維持する。
(2) 危機やストレスになる出来事を耐えがたい問題と見ることを避ける。
(3) 変えられない状況を受け入れる。
(4) 現実的なゴールを作り、それに向けて動く。
(5) 逆境においてきっぱりとした意志を持ってアクションを起こす。
(6) 喪失の苦しみの後に自己発見の機会を探す。
(7) 自信を高める。
(8) 長期的な展望を維持し、より大きな文脈にあてはめ、その見地からストレスを感じる出来事を考慮する。
(9) 希望のある展望を保ち、よいことを期待し、望ましいことを視覚化する。
(10)心と体を大事にして、定期的に運動し、自分に必要なことや自分の気もちに注意を向け、リラックスして楽しめることをする。
(11)過去から学ぶ。
(12)人生において柔軟性と調和を保つ。

 下記のリサーチでは、日本人を祖先に持つアメリカ人は、ヨーロッパ人を祖先に持つアメリカ人のたった14%しかPTSDを発症しませんでした。これは、私が読んだPTSD治療成功率の中で群を抜いてトップです。ポリネシア人を祖先に持つ人たちでは35%とやはり低い割合でした。レジリエンスは、NLPが療法的に創造しようとする有事に対する人間のうまい対応です(実際、NLPのゴール設定、リフレーミング、分離体験は上記の10通りの方法にもあげられています)。レジリエンスは一連のパーソナリティというよりも選択可能な一連のアクションだということをリサーチが示していることに注目してください。そして、同じリサーチの中で、暴力を受けた過去の経験がPTSDになる可能性をほぼ2倍にする(177%)ということにも注目してください。良好な人間関係は害を緩和する役目を果たし、悪い人間関係はより多くの支援の必要性を表します。

Schnurr, P.P., Lunney, C.A., and Sengupta, A. “Risk Factors for the Development Versus Maintenance of Posttraumatic Stress Disorder”, Journal of Traumatic Stress, Vol. 17, No. 2, April 2004, pp. 85—95

クロニシティ(慢性)・ストラテジー

(アンディ・オースティンのクロニシティ・パターンを適用)

 このような思考のストラテジーもしくはパターンは、気楽にしているときは無害のようですが、トラウマのある時期には慢性化に通じます。本人にとっては、困難に取り組むときの正常な方法のように思えますが、こういったパターンがどうしてポジティブな変化を不可能にしてしまうかを示してあげると助けになるでしょう。そのあとで、もっとレジリエンスを促すパターンをインストールすることが可能になるのです。たとえば、新しいキー・クエスチョンをインストールします。

「もし…だったとしたら」クエスチョン
「そうです、でも、もし…だったとしたらどうですか、それは…という意味(こと)ですよね(手に負うのが不可能な筋書き)?」
否定的な「もし…だったとしたら」クエスチョンの肯定的な意図は、未来のチャレンジに対する解決策を予想し、見つけようと試みるのですが、不可能な筋書きを想定することで、本人をパニックに閉じ込めたままにします。

「なぜ(どうして)…?」クエスチョン
「なぜこれが私に起きたのか?」
過去に関する「なぜ?」クエスチョンの肯定的な意図は、新しい意味を探すことですが、本人は可能性の広がる未来志向の意味を受け付けず、あたかもトラウマ的出来事が変えられる、もしくは過去を再創造できるという意味を見つけようとしているかのように答えを探し続けます。

「たぶん」反応
現在感じている感情を測るしたらどのくらいかと尋ねられるか、または内的な経験について何か聞かれたら、本人は、分からないというか、「たぶん」という断りのついた答えを返します。「たぶん」反応の肯定的な意図は、叶わぬ希望を持つような間違いを避けようとすることですが、具体的な情報の確認を拒むことにより、本人は変化を測ることができず、そのためうまく行っていることを実感することができません。

変化よりもむしろ問題が存在しているかを確認する
99%の進展があったとしても、クロニシティのある当人が1%の問題の存在しか確認できなければ、全体的に100%問題が存在しているかのように見てしまうでしょう。「今でも私はそれができる?」反応の肯定的な意図は、危険を効果的に探知し、対応することですが、進展を認識し損ねることにより、本人は継続的に問題全体を再インストールし続けます。

否定的な名詞化
本人が、トラウマ的反応を行動ではなく「物」のように語ることです。「私にはトラウマがあります」「私にはPTSDがあります」「私には傷ついたインナーチャイルドがいます」「私はうつ病です」否定的な名詞化の肯定的な意図は、ラベルを付けることによって何が起きているかを説明することですが、結果は、語られた「経過」が永久的のようで、有害なものの象徴であるかのように提示され、単純に変えられないかのように思えます。

「引き起こす」よりも「被る」立場
「被る」立場にいることで、人は感情的な問題が自分によって起きているとするよりも、自分にふりかかるものとして経験します。「被る」立場にいる人は、変化を求めるよりも治してもらうことを求めるでしょう。「これは私にとってうまく行くでしょうか」というような質問か、「私にはうまく行かなかった」というような発言。そして「一日はうまく行ったけれど問題が戻ってきた」などと言います。結果に対する責任は100%問題やNLPプロセスの方にあり、本人には何の責任もないということを前提にしています。「被る」反応の肯定的な意図は、自分には落ち度がなく起きていると説明することですが、自分が内的な経験を引き起こすという可能性を認めないために、本人には経験を変えることが不可能になります。

三段階の(抑圧された感情の)解除反応プロセス
 相手はNLPプロセスに対して「ノシーボ」反応(プラシーボの反対、「私は有害でしょう」)を抱いています。実際には本人の変化を助けるようにデザインされた全ての介入に対して「コントロール不能な」ネガティブな反応を抱くのですが、問題を維持するような介入は許してしまうのです。「解除」反応の肯定的な意図は、恐れている変化プロセスの結果から自分を守るためですが、それが全ての変化を妨げています。
段階1 シグナル(ほのめかされた感情の兆し) 
例「これが私を気分悪くさせています」
段階2 増幅されたシグナル(直接的な感情の兆し)
    例「今は本当に気分が悪いです。あなたのプロセスが私の気分を害しています。やめてください。さもないと叫びだしてしまうでしょう」
段階3 解除反応(プラクティショナーに対する処分)
    例;嘔吐、痙攣、部屋から叫びながら逃げる、抑制が効かないほど泣く
 
 アーサー・バースキー、ボストンのブリンガム&ウイメンズホスピタルの精神科医は、医療処置の投薬によるノシーボ効果(より悪質な副作用と結果)を経験しやすい患者の特徴をあげています。このタイプの患者は、あいまいで診断が難しいという不満を持つ経歴があり、どんな治療が処方されてもほとんど何も問題を解決しないと決め込んでいます。バースキーは、医療治験で糖の錠剤を服用する患者の20%ほどは不快な副作用があると自ら報告することに着目しています。質問をすることでその割合は高くなります。これは、NLPクライアントのクロニシティ・タイプの人に見られることの医療版と言えるのではないでしょうか。NLPセッションにおいて、このような人たちは、通常ポジティブで変化を生み出すNLPセッションを受けて、頭痛や突然の感情のほとばしりの様なネガティブな影響を訴えます。

Austin, Andrew, Integral Eye Movement Therapy Practitioner DVD Set, IEMT, London, 2010

キー・クエスチョン (Key Questions)

人生に何を求めるのか決める!
(スティーヴ・アンドレアスのCore Questionsを適用)

1. リソースに満ちた状態に入り、ラポールを築く

2. どんな状況あるいはどんな文脈に関して、キー・クエスチョンを探したいか聞く(例:「職場」「子供との関係」「顧客(生徒)とのかかわり」など)。

3. 「その状況を考えながら、その場の自分の身体に入り込んでいるところを想像してください。その場で、あなたの目で何をみて、あなたの耳で何を聞き、身体で何を感じるかに注意してください。どんな行動を取るかを、あなたはどのように決めているかに気づいてください。」4. 「この文脈/状況におけるあなたの全行動を暗黙のうちに導いている質問があるとするならば、それはどのような質問でしょうか?」

5. 「では、その質問について考えてください。そしてその質問を自分に言うときに、それがその状況を思い起こさせるかチェックしてください。」(それに同じサブモダリティがあることを、つまり、その状況そのものを考えているように感じるか、ということをチェックしています)6. 「もしわかるとしたら、この文脈/状況において、この質問をしているあなたの無意識の心のポジティブな意図とは何ですか?」もし相手がネガティブな意図を言ったなら(例えば「自分を心配させるため」)、次のように聞いてください。「そのことが完全にすっかり達成されたなら、それによってあなたが得る、さらに重要なものは何ですか?」
7. 「その状況において、あなたが望むポジティブな利益を得られるようにする、もっと効果的な質問はありますか?」

8. もしあるなら、次のように言う。「その状況にいるあなたの身体の中にもう一度戻って、自分にその新しい質問を言ってください。実際、今声に出して、その状況にいるところを想像しながら、それを言ってください。
今、あなたはその状況にいて、その質問が静かにあなたの心のすみにあって、あなたの行動を導いていることに気づき、そしてその方がもっとずっと楽しい感じがするのをチェックしてください! これから先、再びその状況/文脈になったときを想像し、その新しい質問をすると、感じ方がどのように変わるかチェックしてください。」